2005年05月01日

IT 自体にもはや戦略的価値はない

「IT にお金を使うのは、もうおやめなさい」ですが、思っていたほど否定的、攻撃的な内容でもありませんでした。埋めるべき隙間はありますが、主旨としてはほぼ全面的に賛同です。同僚にも薦めたいですね。

IT 自体にもはや戦略的価値はないです。
その点に関しては異論はありませんが、戦略を体現し、時に戦略に制限を加えかねない IT は、引き続きトップエグゼクティブによる適切なコントロールが必要だと考えます。

企業に競争優位性(言い換えるなら武器)をもたらすのは差別化です。
ライバルでなく自社を選んでもらうには、ライバルと自社の間になんらかの違いが必要です。
差が作れなければ、価格以外に勝負するネタがなくなり、ひたすら価格を原価に近づけ、自社の粗利を削ることでしか勝負できなくなります。
その中から抜き出て粗利を確保するには、なんらかの差別化要因が必要です。(無論、コストリーダーシップ戦略もあります)

投資は競争優位というリターンを得るために行われます。つまり、差別化のために資金を投じます。
ところが IT で差別化することは可能でしょうか?
もはやどこのライバルも ERP を入れ、SCM が在庫管理システムと生産管理システム、販売管理システム、発注管理システムをつなげ、システム間連携で半自動的に決算書と管理会計資料が出てきます。
IT 自体が差別化のポイントとなることは、まずないでしょう。
この意味で、 IT 自体にもはや戦略的価値はありません。

新しい技術が登場した時、いち早く取り入れることで競争優位を確保できます。それがライバルとの差だからです。
しかしその技術が普及するにつれ、その技術から競争優位を得ることは難しくなります。

かつて、鉄道ができたばかりのころは、鉄道で商品や原材料を運ぶこと自体が戦略的でした。
発電が始まったばかりのころは、工場のコンセント配置にその企業の戦略がありました。

技術は初期は個別の企業に利益をもたらしますが、普及期を過ぎると、その進歩は個別の企業よりも社会全体、業界全体に貢献するようになり、個別企業はコモディティ化した技術によるベネフィットよりも、技術に依存することによるリスクに注目するようになります。

コモディティとなった鉄道物流や電気において、重要なのは価値創出でなくリスク管理です。
カリフォルニアの大規模電力不足がシリコンバレーの各社に与えたインパクトは記憶に新しいところです。

そして IT は(まさにドッグイヤーのスピードで)かつての鉄道や電気を追いかけています。
グリッド、ユビキタス、ユーティリティコンピューティング、オンデマンド、オートノミック、SOA …どれもコモディティへと強力に推し進める技術です


では、今後の IT との付き合い方に関してはまた次のエントリで。
posted by 市井賢児 at 2005年05月01日 23:47
| Comment(2) | TrackBack(0) | SI業界


この記事へのコメント
私はこの本を読んでいないのですが、”理論的”には分かる話でもこの手の話は株価の話と同じで、あくまで”理論的には”という前提があるのではないでしょうか。確かにカタログ的に眺めるとどこも同じようなものかもしれませんが、少なくともここ10年のスパンでは、"質”や活用度の差異によってまだまだ差別化の要因になり得ると思っています。
Posted by harutomo at 2005年05月20日 17:49
差別化のために「“質”や活用度の差異」が必用であるというのは正に「IT 自体にもはや戦略的価値はない」ことの言い換えではないでしょうか。

営業車がハイブリッド車かガソリン車かという差異やそれが産むコストなりベネフィットなりは、自動車を使うことの戦略的価値ではないですよね。
Posted by 市井賢児 at 2005年05月21日 14:00
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